シュアリー×シェアリー
 屋上でごろごろしながら自分の不毛な恋愛にやきもきしていると、屋上の戸が開く。時計を確認してまだ施錠の時間じゃない事を確認して、さりげなくやってくる人物に目を凝らす。

「…あ、やっぱいた」
「おう」

 その人物は、春樹の幼馴染でもある遠藤綾だった。体育祭や文化祭や定期考査の日程はいつも綾が連絡してくれる。実家が近く、両親同士も仲が良く、これぞ幼馴染という間柄だった。

「春樹のクラスの子がきたーって喜んでたって聞いて、教室いないからここだと思った」
「お見通しってかー」
「もう今日授業ないよ、帰らないの」
「んうー、帰りたくないんだよなぁ」
「…今日も、なっちゃんとこ行くの?」

 幼馴染の間柄、綾は夏美とも面識がある。そして、仲もいい。だから両親と喧嘩して家出をしていることももちろん知っているのだろう。

「んーまぁ」
「おばさん心配してたよ」
「…分かってるよ」
「なっちゃんにも迷惑かかるよ、それになっちゃん同居してる人いるんでしょ」
「あの喫煙野郎は別に俺がいようがいまいがあんまり関係ないっつの」
 憎々しく吐き捨てると、拗ねてるみたいだよ、と笑われる。全力で否定すると、まだ好きなの?と唐突に真面目な顔で尋ねられた。
「なっちゃんのこと。まだ、好きなの」
「…まだって…心変わりする予定はねぇよ」
「…その方が楽なことだってあるんだよ」
「じゃあお前は好きなやつ簡単にあきらめられんの?」
 少しいらだって返すと、綾は悲しそうに笑った。私も人の事言えないから、と。なんとなく気まずい沈黙が流れて、綾が立ち上がる。
「春樹、帰ろ」
「…家には帰んねえぞ」
「連れ戻すつもりもないよ」

 久しぶりになっちゃんにも会いたいなあ、と呟きながら自分の腕をつかんで歩きだす。あんなに渋っていたのに、綾に腕を引かれているとだんだんどうでもよくなってきた。昔から、綾に半ば無理やり連れまわされつつも、最終的には前向きに歩けるように意識を変えられているのだ。かなわねーなぁと呟くと、不満そうな顔をして何ようと綾が振り向く。

「なんでもねえよ、ほらちんたら歩くなよ」
「わ、急に引っ張らないでよ!」

言葉は異を唱えているけど、どこか楽しそうな綾が早足で春樹の後を追う。
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