シュアリー×シェアリー

01.6:keep it in your mind 2

 綾と寄り道をしながら(帰りたくない気持からのせめてもの反抗だ)、夏美と雪子の家までの道のりをだらだら歩く。帰りたくねーなと呟くと、綾が困ったように笑って提案する。うちに泊まればーと軽く提案できるのは、幼馴染だからだろう。

「やだ、おまえんちいったらおばさん絶対お袋に電話して連れ戻される」
「ははは、いなめなーい」
「あー、毎度の事とは言えこっちが意識してんのにあっちはけろっとしてんのがむかつくんだよな」

 いっそあきらめられたら楽なんだろうな、と綾に言われた言葉を思い出しながら呟くと、綾が春樹の鞄をつかむ。

「あ、なに?なんか面白いものあった」
「あきらめるには新しい恋愛だと思うんだよね」

 いやに真面目な顔で言いだす綾に怪訝な表情を返すと、もう!と綾が焦れたように地団太を踏む。

「目の前にこんないい子がいるんだし、ちょっとは揺らいでよ!」
「…は?おれ今告白されてんの?」

 笑いながら冗談めかして言うと、顔面に平手が飛ぶ。いってえ!と唸りながら綾の顔を見ると、どうやら冗談じゃないらしい。なんでこのタイミングなんだよと疑問に思いつつ、少し考えてみる。

 自分の好意をさらっとかわす、従姉妹の夏美と、昔からなんでも知り合っている幼馴染の綾。世間的にみれば、断然後者の方が幸せになれるだろう。夏美ほどではないが綾だって可愛い顔だちをしているし、自分のモデルという仕事も受け止めてくれるだろう。拒否する理由を探すほうが難しい。

「……」

 黙りこくっている春樹に綾が鋭い眼光をぶつける。何か言ってよと怒った様子で返事をせがむ。

「お前、それ仮にも好きな相手に向ける目つきかよ」
「好きだけど、同時にむかつくもん」

 べえっと舌をだして自分に悪態をつく綾を小突くと、綾の後方から視線を感じる。道端で視線を送られるのは、職業上よくあることなのでいつものように目の前の人物に視線を戻そうとすると、視線を送る人物はよくしった人間だった。
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