シュアリー×シェアリー
「…夏姉」
小さく呟いた春樹の声に反応して綾も後ろを振り返る。どうやら会話を盗み聞きしていたらしい夏美がにこにこ笑っている。
――だから、なんでこのタイミングなんだよ!
「春樹、」
「綾、ごめん。綾の事好きだけど、やっぱそういう風には見れない」
「…」
そして次は本気の平手が顔に当たる。今度は怒った顔でも焦れた顔でもなく、目に涙をためた綾が目の前にいる。
「振られたからたたいたんじゃない。断るときくらい、こういうときくらい、なっちゃんじゃなく、私をみていってほしかった」
春樹なんかしらない、そういって綾が駆けだした。夏美とすれ違う時、一瞬立ち止まって夏美にあいさつをしてまた駆けだした。最低な事をした、自覚はある。自責の念に駆られていると、夏美が春樹に近づいてきて、追いかけなくていいのとのんきに尋ねる。
「…いや、いまは」
「とりあえず、かえろっか」
夏美が春樹の腕をつかんで、綾の時とは違う熱さをもった手に居心地の悪さを感じながらその場を後にした。