シュアリー×シェアリー
01.7:R U serious?
「…雪子、抵抗しないの?」
春樹の熱い吐息が耳に落ちる。
「抵抗、してるっつの…」
ずっとそらしていた顔を春樹の方に向けると、馬鹿みたいに余裕のない事が分かる彼の表情が目の前にある。ほんとなんなの、と困惑しつつ目をそらすと思い切り顎をつかまれる。
「雪子、」
流されたらだめだ。本当ごめんね、と呟いて思い切り足をけり上げる。男性にとっては一番痛い場所を膝で思い切り蹴飛ばし、そのすきに立ち上がる。
「いっ…お前まじ…ふざけんな…ちっくしょ…いてーな!」
「ハルが悪い!冗談にしても悪質すぎる!」
「冗談じゃねぇよ!俺だってお前みたいな女、と思ったよ!でも好きになったんだからしょうがねえだろ…!あー!いてええ」
あまりにも激痛で、バイクのカギを握りしめ玄関を飛び出す雪子を追いかけられない、畜生、ともう一度呟いて痛みが治まるまでの間、床をのたうちまわった。
さっきまで自分の下にいた雪子の香りが鼻につく。憎たらしいほど、いとおしい。嫌いだったタバコの味のするキスも、その感覚を確かめるようにぺろりと自分の唇を舐める。馬鹿みたいに震えていて、馬鹿みたいに扱った。
「これが、冗談だったら、お前の言う恋愛ってなんなんだよ」
雪子の顔に触れた左手を強く握って、雪子の忘れたタバコに火をつける。吸い込んで咳き込んで。なにがいいんだこんなの、と吐き捨てて箱ごとゴミ箱へ放った。