シュアリー×シェアリー
01.2:Encount
竹屋春樹は佐々木雪子の親友、夏美の従兄弟だった。
モデルをやってる親戚がいる、とは聞いていたけど自分の生活になんら関係のない情報だったので対して掘り下げて聞いたこともなかった。今では夏美は自分の同居人だから、全く関係ないと言ったらウソになるかもしれないが、日常生活ではなんら関係がない。
そしてその日常生活に突然春樹が割り込んできたのは、少し風が蒸し暑さを含んできた初夏の事だった。
「…あんた、誰」
室内だというのに、サングラスと帽子をかぶったままの格好で呟いたその言葉が春樹と雪子の初めての会話だった。
「人に尋ねんならまず自分から名乗れって初等教育で教わらなかったか、少年」
礼儀を重んじる雪子が毛嫌いするタイプの人間が突然家に入ってきて、一応家主である自分にあんた誰とほざく。イライラを顔に出さないように、ベランダでタバコをくわえたまま、あくまで冷静に言葉を返した。
「竹屋春樹、夏美の従兄弟。ここ夏姉の家だって聞いてたんだけど。」
どさっと乱暴にスーツケースをフローリングに置き、ラグに座る。礼儀知らずなガキだな、と思いながら同居人だよと答えると対して興味もなさそうにあっそ、とつぶやいた。こういう礼儀知らずの男は大嫌いではあるが、初対面で説教するほど非常識でもないので、適当に自己紹介をした。雪子の事を多少(今思えばかなりだろうが)夏美から聞いていたらしく、あんたが雪子ねと不機嫌そうに春樹が呟いた。モデルをやっていて、そこそこ人気があるとは聞いていたけど、メディアに対して興味が薄い雪子にとって春樹の顔は綺麗だという事にしか特化しておらず、有名人が家にやってきたというドキドキ感もなかった。とりあえずお茶でも出すか、とタバコの火を消そうとすると、春樹が雪子の逆鱗に触れた。