シュアリー×シェアリー
「つか、タバコくせえ。俺タバコきらいなの、やめてくれね?」
あーまじ無理、とサングラスを外しながら舌打ちをする春樹の横を通り過ぎ、キッチンにあった雑巾を顔に投げつけた。当然、激怒する春樹に向ってやかましい!と怒鳴る。
「外をがらがらがらがら引いてきたスーツケースを直接フローリングに置かない。人んちに入る時はサングラスと帽子をとりなさい。第一、人の家に勝手に入らない、チャイムぐらいならしなさい」
間髪をいれず、ラグに胡坐をかく春樹を見下ろす。その威圧感と、平坦な声ながらも怒りが伝わる雪子の声に春樹が固まる。顔に投げつけられた雑巾でスーツケースの足をふく春樹に目線を合わせるように、雪子がしゃがんだ。
「目上の人に注意されてる時、君は胡坐をかくのが礼儀だと思ってる?」
がしっと頬をつかみ、低音で呟くとそそくさと春樹が姿勢を正す。姿勢をただしたところで一番言いたかったことを、春樹を睨みつけながら呟く。
「君の家じゃない、私と夏美の家。どこで、いつ、タバコを吸おうが関係ない。嫌いなんだったら今すぐ荷物もっておうちに帰りなさい」
額にげんこつをぶつけると黙ったままの春樹が呻いた。ふざけんな、と呟く春樹にお前がなと返すと春樹が睨みつけてくる。春樹が反撃しようと口を開いたとき、ただいまあと気の抜けた声が玄関に響いた。その声を聞きつけて、夏姉!と春樹が駆けだす。
「わ、あれー春ちゃん!どうしたの?」
「しばらくの間泊めてもらおうと思ってさ」
私はいいけど、と笑いながら、夏美が雪子のいるリビングへ入る。おかえり、と雪子が呟くのと同時に、今度は夏美が雪子に抱きつく。
「ゆき今日遅くなるって言ってたのにー!なんでー?!」
「飲み会面倒くさいから断ったー」
「えー!嬉しい!」