シュアリー×シェアリー
「夏姉は最近なんかないの?」
「んー…」
含みのある笑い方で、夏美がはぐらかす。もし自分が今、ここで、思いを伝えたらどうなるんだろう。のど元まで出かけた言葉を飲み込む。
「…年下は、ちょっとなぁと思うけど」
まだ言うタイミングじゃないよな、と自分を納得させた時に、不意に夏美がすこしとげのある言い方をした。夏美に視線を合わせると、笑顔の夏美と目があう。
「ゆきみたいな人じゃないとだめ」
にっこりともう一度笑って、笑っていない目で春樹を見つめる。
――ああ、牽制かけられてるのか
冷静に判断しつつ、ちくちくと胸が痛む。なにも言えず黙ったまま視線を合わせていると、ごちそうさまと夏美が席をたった。
すっかり冷めた味噌汁をぐるぐる、と箸でかき回す。雪子がみたら叱られるだろうな、と思いながらもぼんやりとした頭のまま動作を繰り返す。
そして、牽制をかけられたことに思ったよりも傷ついてない事実に安堵する。ユキみたいな人って、なんだそれと呟く。
雪子に対して、八つ当たりと分かっていながらも怒りの感情を抱いて、帰ってこなければいいのにと強く願った。