ユビキリ
地上に視線を戻せば、数人の子どもたちが、てんでの方向へパッと散っていた。
地元の子どもたちのようだ。
めまいから一瞬にして引き戻してくれた『ゆびきった』という言葉は、私に向けて言ったものではなく、遊んでいた延長での言葉だったらしい。
彼らの小さな背を見ながら私は、自分の記憶にさざ波がたてられたのを感じていた。
それは彼らの背中を見てなのか、それとも『ゆびきり』のせいか。何に反応してのことなのか、一瞬には捉えられなくて。
ただ漠然と。記憶の奥底で、ザラリとしたものが蠢くのを感じていた。
公園。
『ゆびきり』、約束。
『ゆびきった』という声が、頭の中でこだまする。
それはいつしか、いま聞いた子どもの声ではなく、徐々に違う声へと変化していった。