服従の宴―契約―
睡眠不足が不味かったのか、それとも生徒立ち入り禁止の看板を無視したのが悪かったのか、その両方が悪かった。
彼の目の前で交わる男女。
男は教師で、女は生徒。
女生徒は彼に気が付き「やめて……」と掠れた声を出す。それとは対照的に、落ち着いた様子で男は行為を完璧に済ませてしまおうと女を押さえつけた。
だけど男は身勝手に「ダメだ、気分がのらねぇ」と女生徒を解放し、彼女は涙を流しながら着衣を整える。それから、おぼつかない足で非常階段を駆け下りていった。
凍りついたように動けない。
「……あー、つまんねー……」
音をたててベルトをしめなおす。数学教師の徳田瑛士だけは平和な昼休みを満喫している。
数学教師のくせにホストみたいな外見で女子にはかなり評判がいい。男子生徒からも兄貴的存在で慕われている。
徳田は黒いスーツをいつも通り完璧に着こなすと、唖然として動けない寝不足の彼の隣に座った。
「今夜のおかずには困らないだろ?」
徳田は煩わしそうに目を細めた。それから、見たことのない外国の銘柄の煙草に火をつける。