服従の宴―契約―
縛られた現実
──────台所の水場の蛍光灯が、チカチカと点滅する。水道の蛇口をひねり、冷たい水で口を濯ぐ。
何度も何度も洗い流しても、あの男の薄い唇と艶めかしい舌先の感覚が消えない。
顕斗は、流れる水に頭を突っ込んだ。
「あの男、絶対ゆるさねぇ……」
なんで、自分がこんな不憫な目に遭わなきゃいけないんだろう……目を瞑って頭をかきむしる。
アパートの床に水滴が飛び散った。母親がいたら、口うるさく叱られたかもしれない。
蛍光灯が、最後の抵抗虚しくパチンと音をたてて消えた。
部屋は暗闇に包まれる。
アパートの窓から、僅かに街灯の光が漏れる。