恋色カフェ
──この人は、この場所を知っていた。
「どうしたの……?」
「いえ……っ、別に」
横目でこっそり伺っていたつもりだったのに。思いがけず店長と視線が合ってしまい、私は慌てて視線を逃がす。
私だって、来たことあるんだから。
そんな顔が出来ないものなんだろうか、と、自分の正直さが恨めしい。
……誰と来たんだろう、って、どうしても考えてしまう自分の思考も。
「どう?」
「……凄く、綺麗」
大きな窓から見える夜景は、思っていた通り、素敵に煌めいている。
ふと辺りを見回せば、社会人なのか、2人共スーツを着たカップルと、老夫婦だけしかいない。
「ここは、知る人ぞ知る場所だからね」
「……店長は、どうしてこの場所を知っていたんですか」