恋色カフェ
「何、言って……」
「目、瞑って」
耳許で囁かれた声は、鼓膜だけでなく背中までも震わせていく。
……嫌だ。この人のペースに乗ってたまるか。
「ほら、早く」
吐息まじりの声が、厭らしい。厭らしいけど……優しい。
私はつい、俯いていた顔を上げてしまった。
「その顔、そそるだけだよ」
店長はそう言って、妖艶に微笑む。彼の指が私の髪に伸び、前髪がはらわれた時、反射的に目を瞑ってしまった。
瞼に、唇の感触。
「……ッ」
「まだだよ。目を瞑って」
──もう、抗えない。
瞼に落とされた小さな熱が、気持ち良くて。欲望には勝てず、素直に目を瞑ってしまった。