恋色カフェ



顔が、一気に熱くなった。


私が何を言おうとしたのか、この人には見透かされていたんだ、という恥ずかしさと、やっぱりこの人には敵わない、という悔しさで。


頬から耳へと店長が指を這わせると、ゾクリ、と身体は甘く震えた。



「してほしければ、素直にねだれば?」


髪が耳に掛けられ、顕になった耳朶に熱い息がかかる。


その時、不意に頭に浮かんだのは、万由さんと勝沼君の台詞。



“お客さんに手を出して…”


その手で、何人の女性に触れたの……?



────嫌、だ。



頭を振ると「何?」と店長は驚いた声を上げた。



「…………素直に言えば、お仕置きやめてくれますか」


こんなこと、言いたくないのに──嫉妬心が、心を掻き毟る。

私の言葉に、店長は虚を衝かれたような顔をした。


「……仕方ないな」



──でも。

悔しいぐらい、私はこの人が好きなんだ。



「ちゃんと……キス、して下さい」


満足そうに優しく微笑んだ店長は何度も、深く、蕩けそうな極上のキスをくれた。



< 121 / 575 >

この作品をシェア

pagetop