恋色カフェ
私はふと、あかねの話を聞いて疑問が湧いた。どうして秀人は私にお金を貸して、とは言わなかったのか。
彼女の私になら、借りやすかった筈なのに……。
「ホント、別れて正解だったよ。別れるのに、揉めたりもしなかったんでしょ?」
「……うん」
揉めるどころか、不気味な位すんなりだったよ、とは、何だか言えず。
「てっちゃんも、メアドも変えて着拒したって言ってたし、彗もそうした方がいいよ」
今思えば、秀人のあの異常なメールの数は、返済の催促だったり、秀人が連絡した人からの返信だったのだろう。
私はわかった、とあかねに言いながら、氷が融け、赤が薄められたカンパリソーダを口に入れる。
気の抜けた刺激のない液体は、しっかり苦味だけ残していた。