恋色カフェ


今度は遠慮することなく彼の顔を見ると、口許には意地悪な笑みが浮かんでいた。



「もっと、お仕置きされたい?」

「……遠慮します」

「そんなこと言って。店長って呼ぶのは、お仕置きされたいから、じゃないの?」

「違いますよ……っ」


気がつけばいつも、こんな風に店長のペースに乗せられている気がする。

少しでも、優位に立ちたいのに。



──でなければ、不安になる。



「そんな顔するなよ。ほら、もう着くよ」


店長の言葉に、俯き気味だった顔を上げると、そこには見慣れた景色が広がっていた。



(……あっという間、だったな)


< 137 / 575 >

この作品をシェア

pagetop