恋色カフェ
今度は遠慮することなく彼の顔を見ると、口許には意地悪な笑みが浮かんでいた。
「もっと、お仕置きされたい?」
「……遠慮します」
「そんなこと言って。店長って呼ぶのは、お仕置きされたいから、じゃないの?」
「違いますよ……っ」
気がつけばいつも、こんな風に店長のペースに乗せられている気がする。
少しでも、優位に立ちたいのに。
──でなければ、不安になる。
「そんな顔するなよ。ほら、もう着くよ」
店長の言葉に、俯き気味だった顔を上げると、そこには見慣れた景色が広がっていた。
(……あっという間、だったな)