恋色カフェ
暑い国を思わせるスパイシーな香りに混ざりあう、甘さと、煙草の苦い香り。もう少し、この香りの中にうずもれていたい、なんて。そんなことを口に出したら彼の思う壺、だ。
「ありがとう、ございました」
「今日は証拠を押さえられなかったから、今度はもっと早く迎えに行かなくちゃな」
「証拠、って、」
「そういう怒った顔も、そそる」
後頭部に手が回されたかと思えば、すぐに顔が近づく。
私は気持ちとは裏腹に、せめてもの抵抗と、唇を固く結んでやった。
「……意地悪だな」
本当は抱きついて、私からキスをしたかった。心配して駆けつけてくれたんだとしたら、これ程嬉しいことはなかったのだから。
ただ素直に、この気持ちを伝えたかった。