恋色カフェ
「……だから。
今度、ここから先に行かせてよ」
「ここから……先って?」
「彗の家に決まってるだろ」
店長は窓の外のアパートへ向け顎をしゃくりながらそう言って、流し目に私を見る。
「よし決まり。近々、彗の家に泊まりにいく」
「……随分、勝手ですね」
『泊まりに行く』という一言に、鼓動が尋常じゃない速度で胸に打ちつけてくる。何とか冷静を装いながら、さっきの店長の言葉を丸々お返ししてやる、と。
「今週末にしようか。彗の手料理も食べてみたいし。休みの時なら大丈夫だろ?」
私の言葉はあっさり流され、更に勝手な注文まで上乗せされた。
「俺のことも、今より知ってもらえると思うけど」