恋色カフェ
劣情
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「高宮さん」
天気の良い、昼下がり。
日射しの暖かさに包まれ、ぼんやり考え事をしていた私は、突然呼ばれた名前に思わず肩が上がった。
「は、はい?」
顔を上げると、目の前のデスクに座っていたその人は、含みのある笑顔を見せている。
──ああ、そうだった。
今事務所には私一人なんかじゃなかった。そんなことも頭から抜け落ちる程……だったなんて。
「なんか、いいことでもあったんすか?」
「……え?」
「いや、だって。ニヤけてたから」
「うそ?!」
「無意識っすか。やーらしい」
そう言った勝沼君の方が、ニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべている。