恋色カフェ
店長との約束──と言っても、彼が強引に取り付けたものだったけど──が、明日に迫り、私は仕事中だというのに、何を作ったらいいか、と必死に考えていた。
誰かの為の料理なんて。どのくらいぶりだろう。
「やらしい、って……。別に変なこと考えてた訳じゃないし」
「ふうーん」
「やだその顔、もう、やめてよー」
勝沼君は机に左肘をつき、手に顎を乗せた恰好でまだニヤニヤしている。
「……ダメだね、私。ここにいるから緊張感がないのかな。すぐ考え事しちゃって」
言い訳すれば逃げられるか、と。ちょっと狡い考えで、そう口にした。
「いや、俺は別に責めるつもりでそう言った訳じゃないっすから」