恋色カフェ
結局、メニューは鶏のから揚げにした。
母の得意料理で、私も何度か手伝ったことがあるから大丈夫だと思ったのだ。
でも一応、と、作る前に母親へ確認しようと電話をいれたのが間違いだった。
耳の痛くなるような、余計な話題まで引き出され、結局、電話から解放されたのは、料理を始めようと思っていた時間から1時間後。
おかげで、まだ半分しか出来上がっていない。
「いいよ、ゆっくりで。酒もたくさん買ってきたから、先に飲んでるし。それに」
お酒の缶がたくさん入った袋を私に手渡しながら、店長はニヤリと口許に弧を描いた。
「彗の料理している姿を肴に酒を飲むっていうのも、悪くない」
こういうことを恥ずかしげもなく言えるのは、元々の性格なのか、それとも。
言い慣れているから、なのか。