恋色カフェ


いつになったら、ちゃんと名前で呼んでくれるの、とため息まじりに言いながら、店長は上体を起こした。


「だって……間違って店でも名前で呼んでしまいそうで……」


名前を呼ぶのが照れ臭い、とは絶対言ってやらない。でも、これも本当のことではあったけど。



「いいじゃん、呼んでも」

「だ、めですよ!」

「なんで?」

「なんで、って……」



『付き合ってるのがバレたらどうするんですか』と喉まで出かかって、私はその台詞を飲み込んだ。


そんなこと、言えない。

私達はそもそも、付き合っているかどうかもはっきりしないんだから。



「言いかけてやめるなよ」


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