恋色カフェ
◇砂の城

暗雲


■□■□■□■



事務所の扉が開いた音に、心臓を跳ね上げてしまうのはいつものことだけれど。



「びっくりさせないでよ……」


思わずそう口にしてから、私は床に落ちたファイルを拾い上げた。


どうやら肘がファイルにぶつかったらしい。そんな感覚はなかったけど、ここには私一人なんだから、それしか考えられない。



こんなにも、物音に敏感になっている理由は、ただ一つ。


店長が家に泊まりに来てから、今日初めてここで彼に会うから。


どんな顔をすればいいのか。いや、どんな顔になってしまうのか。彼の顔を見たら、あの日のことが生々しく頭に浮かびそうで。


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