恋色カフェ




店長は予想に反して、私の身体に触れることもなく、その後突然、我に返ったようにキスを止めた。



『向こうは俺が片付けるから、彗はそのまま横になってて』



呆然としていた私の耳に残ったのは、早口で並べられたその言葉の、残響。


程無くして頭が正常に動き出してから、焦って体を持ち上げようとしてはみたものの……お酒の力は侮れず。



仕方なく、烏龍茶をひたすら飲んで飲んで。

何とか起き上がれるようになってリビングに戻れば、もう片付けは終えられていて、店長はソファーで寝息を立てていた、という訳──。



確かに何もなかった、けど。


あの夜、キスした時の、いつもとは明らかに違う店長の熱を帯びた瞳を思い出すと、温もりも、感触も、何もかもが鮮明に蘇って心臓が騒ぐ。


あんな顔、初めて見た──。


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