恋色カフェ
「失礼しまーす」
ノックも無しに、突然ガチャリと事務所の扉が開き、私は今度こそ心臓が飛び出しそうになった。
「あ、す、すんません! 俺、今ノックしなかったっすよね」
これ以上あかないくらい目を見開き、胸を押さえている私を見た勝沼君は、心底申し訳なさそうな顔をしている。
「あ、う、ううん……ちょ、っとびっくりしただけ……」
胸に溜まっていた息を大きく吐き出す。
最近、勝沼君にはこんなところばかり見せている気がする。何やってるんだろう、私。
「いつも一人だから、突然物音がするとびっくりしちゃって」
小心者で嫌になっちゃうよねー。そう付け加えた私に、勝沼君は微笑んで小さく首を振った。
「そう言えば店長、最近フロアに出ずっぱりっすもんね」