恋色カフェ
胸に湧き上がった棘々したものを、私は必死に押し殺した。
「来週、コーヒー豆をここに卸してる業者の社長と、農園に行ってくるって。えーっと、ブラジルだったっけ、コロンビアだったっけ……」
「海外?!」
「場所は忘れましたけど、海外なのは間違いないっすよ。ほんとあの人、コーヒー豆にはかなりこだわるっすよねー。その姿勢は尊敬に値するんだけど」
私生活がなー、と言いながら勝沼君は苦笑いを浮かべている。
確かに3年前も、仕事への姿勢は褒められたものではなかったけど、コーヒー豆にだけは凄くこだわりを持っていた。
どこかから豆を持って来ては試して、気に入ればあっさり仕入れ先を変えたりして。
「多分、コーヒーに心底魅了されているんだろうね、店長」
──そんなところにも、私は惹かれたんだ。