恋色カフェ
この店のスタッフが、どれだけ彼女の気持ちに気づいているかはわからない。
もし気づいていたとしても、店長が離婚した今、咎める人は誰もいない。
……もちろん、万由さんが私にしたような“忠告”はあるかもしれないけど。
私は、事務所の扉に視線を向けた。
この席に理英さんがいた時、事務所は私にとって癒しの場だった。
店長とぶつかって、スタッフとも距離が出来始めて、日に日に、居場所が無くなっていった時も、ここは私を無条件で受け入れてくれた。
──なのに。
今、この場所は時折、私を寂しくさせる。
あの、薄い扉一枚が、分厚い壁に感じる時がある。
もしかしたら、アンバーで私だけ知らないことがたくさんあるんじゃないだろうか、と。