恋色カフェ


「お疲れー」


目に飛び込んできたのは、何時間かぶりの、店長の姿。

真っ直ぐこちらへ歩いて来たと思えば、店長は持っていたテイクアウト用のカップを私の前にことり、と置いた。



「飲んで」


私が言葉を発する前に、彼はそう言ってこちらに微笑を向ける。


「いつも残業してくれてるから、たまには労わないとね」


愛しい、声が────やっとこっちを向いた。


店長と話が出来たことが純粋に嬉しくて、口許がにやけそうになる。私は気づかれる前に、ご馳走になります、と言ってそれを口にした。



「どう?」

「美味しい……」


苦味と甘みが程よく感じられて、私の好みの味だ。

でも……何となく、いつものアンバーのブレンドと違う気がする。


< 177 / 575 >

この作品をシェア

pagetop