恋色カフェ
ガチャリと扉が開いたと同時に、私は後ろから店長に抱きしめられた。
「……拗ねてるの?」
「ち、がいますよ、」
「じゃ、そんなに慌てて帰らなくてもいいじゃない」
「だって、電車の時間が……」
「送っていくから」
言い訳も一瞬で封じられ、次の言葉が出てこない。
来週から海外なら、シフト的には今日でしばらく会えなくなる。確かにこのまま別れるのは寂しい、けど、でも。
「今日全然かまってやれなかったから、やっぱり拗ねてるのか」
「違う……っ」
くるりと、私を自分の方へと向かせると、じっと私の目を見つめてくる。
──やだ。今は、覗いてほしくない。