恋色カフェ
「顔、逸らさないで」
「……っ」
「こっち見て」
「……」
「彗」
店長の声は、いつものように意地悪な色もなく、優しさを纏った柔らかな音で耳に響く。
その声が優しければ優しい程、私は彼の方を向くことが出来なくて──。
「彗を、存分に目に焼きつけさせてよ」
さすがの一言に、私は店長の方を向かざるを得なくなった。
「……来週丸々、海外なんですよね」
「知ってたんだ」
「昼間、勝沼君から……」
「アイツ……余計なことを」
余計なことを、と言った店長の真意がわからず、ただ何となく悲しくなって俯いてしまう。