恋色カフェ
従業員口から直接ここへ来たのだから、スタッフの雰囲気やみんなの私への態度も、勝沼君は知らない筈。
私の顔を見て、何かを感じ取ったのか。
勝沼君は今まで見せたことのない、真剣な顔でそう言った。
でも何にせよ、彼もこの店で起きている“何か”について、知っていることは確かだ。
「……何とか、大丈夫」
わざと、核心に触れるようなことは避けた。が、この返答自体、何かあったと認めていることになるんだけど。
普通を装い、口角を上げながら言うと、大丈夫じゃないでしょ、その顔は、と苦笑まじりで返ってくる。
「俺の休憩時間まで待ってて」
ここに来るんで、勝沼君はそう付け加えて、慌ただしく事務所を出て行った。