恋色カフェ
勝沼君はパタリ、と後ろ手で事務所の扉を閉めると、私の方を向いて苦笑した。
「事務所だと誰か来るかもしれないんで、倉庫に……いいすか?」
「……うん」
私はカードをスキャンさせ、倉庫の扉を開いた。事務所の方へ、誰もいない部屋からひんやりとした空気が流れ込んでくる。
「寒くないっすか?」
倉庫の扉が閉まったのを確認してから、勝沼君がいつもよりも小さな声でそう言った。
「ううん。それより、せっかくの休憩時間なのに……」
「いいんすよ、俺から言ったんすから」
彼は倉庫にあったノベルティの折りたたみチェアを開いて腰掛けると、もう一つ開いて、どうぞ、と座面をトントンと指で叩く。
私は少し躊躇しながらも、隣に腰掛けた。