恋色カフェ


テーブルに着いて、コーヒーを一口飲みこむ。──今この沈黙は、結構辛い。

牽制してると思われたのか、万由さんはさっきから私と視線を合わせようとしない。


この沈黙の中で、お互いに腹を探りあっているというところなのか。いや、それは私の方だけで、万由さんはそんなつもりはないのかもしれない。



「手短に済ませるから」


やはり、口火を切ったのは、万由さん。


私は手先から動揺を悟られたくなくて、持ち上げていたカップをテーブルに置いた。



「……私、先週遅番上がって、一度店を出た後さ」


ようやく私と視線を合わせると、万由さんは涼しげに微笑む。



「店長に確認しなきゃいけないことを忘れてて、アンバーに戻ったんだよね」


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