恋色カフェ
◇朧な灯
挑発
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──もういい加減、この空気には慣れた。
個人で買って、仕事で使っていたお気に入りのペンのインクが無くなり、そう言えば替芯はロッカーに置いてたんだっけ、と気づいたのは、朝、自宅を出る前。
事務所に置いておけばよかった、と思ったところで、今更。
仕方なく、意を決して休憩室の扉を開けると、やっぱり、しんと静まり返った室内。
俯き気味にロッカーまで向かえば、そこには──万由さんがいた。
「おはよう、高宮さん」
「……おはよう」
先週の出来事が嘘のように、万由さんは笑みまで浮かべている。
「あ、そうだ。高宮さん」