恋色カフェ



事務所の窓を開けると、湿ったアスファルトの匂いがした。


(雨、降ってきたんだ……)


小雨は少しずつだけれど、路面を濃く色づけていく。



──少しずつでも、積み重なれば、確実に黒くなる。

そして、雨が降り止まないうちは、乾いて元の色を取り戻すことはない。


吐き出した、ため息。もう、ため息を吐くことが癖になってしまっているようで嫌になる。



「……朝礼の時間、か」


窓を閉め、手にしていた替芯を、わざとゆっくり引き出しに仕舞った。


(行きたくないな……)


でも、割り切らなくちゃ。

私は仕方なく、重い足取りでフロアへと向かった。


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