恋色カフェ
棚に立てかけていたファイルを手に取ろうとした時──ガチャリ、扉が音を立てて開く。
私は危なくファイルを落としそうになった。
入ってきたのは……店長。
「何、驚いてんの」
店長はクスクスと笑いながら、こちらに近づいてくる。
「ただいま」
私の側まで来ると、そう言って優しく微笑んだ。久しぶりの、煙草とシークレットの香りが鼻腔をくすぐって、思わず胸が鳴る。
「……おかえり、なさい」
今、ちゃんと笑えているのか、自分ではわからない。精一杯、口角を上げているつもりではあるけど。
「どうした?」
「……え」
「そんな顔して」