恋色カフェ
いつもなら、それは私の台詞で。
自分は言われても聞く耳を持たないくせに。
心の中で不服を唱えつつも、今は店長の言っていることが正しいと自分でもわかっている。
こんなところで嗚咽を漏らすまで泣くとか。
──私、何やってるんだろう。
「彗」
髪を撫でる手は、いつもと同じように優しくて、ますます泣きたくなる。
「このままでいてやりたいけど……もう少しでここに人が来る。涙拭いて」
店長は自分のポケットからハンカチを取り出し、私に差し出す。
自分のハンカチもすぐ手元にあったけど、私は黙ってそれを受け取った。
(……シークレットの香りだ)
店長の側にあるものは、当たり前だけど、どれも店長の香りがする。