恋色カフェ
涙を拭き、何度も深呼吸してどうにか落ち着きを取り戻せた頃、店長の予告通り、事務所の扉が開いた。
姿を現したのは──万由さん。
私は顔を見られたくなくて、慌てて彼女に背を向けた。
「ああ、さっき話したのはこの袋に入ってるやつ。とりあえず空けといた所に並べといて。
で、今日少し棚替えしようと思ってたんだけど、土屋さん、残れそう?」
「あ、はい。大丈夫です」
彼女が今どんな顔をしているかなんて、容易に想像がつく。
今、万由さんと顔を合わせれば、勝ち誇ったような笑みを向けられるだろう。
「並べたらチェックしに来て下さいね、店長」
「土屋さんならチェックしなくても問題ない」
「ダメですよ、店長が最終チェックしてくれないとー」