恋色カフェ
──何だ、こいつ。
口元に意味ありげな笑みを浮かべている万由を見下ろす。森谷はなるべく感情を表に出さないようにして、やんわりとそのしな垂れかかった体を自分から離した。
見れば、遠巻きにこちらを窺っていたスタッフ達まで、ニヤついている。
「……わかった。会計済ませたら行くから、みんな先に外出てて」
一体、何が起こっているというのだろう。
さっきスタッフから投げられた質問も、まったく以て意味がわからないままだった。
「……店長」
「……何?」
「今、店長がどういう状況にいるのか、わかってますか」
大勢のスタッフが居なくなって、急に広くなった室内に勝沼の淡々とした声が響く。