恋色カフェ
「入るまで、見届けたいんで」
「でも……」
「じゃないと気にかかって、今夜眠れそうもないし」
勝沼君は責任感が強いから、そう言うのも頷ける。頷ける、けど──。
鞄に手を入れ、いつも鍵を入れているポケットから鍵を取り出す。指先に緊張が走っているせいか、鍵穴にうまく刺さってくれない。
刺さって、刺さって、と念じれば念じる程余計に。
ようやくザクリと鍵穴に鍵が入り、それをひねるとどこかほっとした。
「いろいろ、迷惑かけてごめんね……。ほんと、ここまで送ってくれてありがとう」
自分ではいつも通りのつもりだったのに、言い終わらないうち、勝沼君から視線を外してしまう。
「……じゃ、おやすみなさい。帰り、気をつけてね」