恋色カフェ







「────……、」



ドアを開け、体を室内へ滑り込ませ、ドアを閉めようとした筈──なのに。


何かが挟まった?

そう思ったのも一瞬だった。



(え……)


ドアの隙間から見覚えのあるシャツが覗く。それを辿れば、ドアに掛かっていた細い指。

ドアはあっという間に開かれ、目の前に再び現れた姿を、私はただ凝視していた。


パタリ、と無情な音を立てて、ドアが閉まる。



「ちょ、っ……!」

「しっ」


まるで煙たそうな目で、彼はこちらを見つめる。



「お願いだから、大声は出さないで」



< 295 / 575 >

この作品をシェア

pagetop