恋色カフェ
「この髪を、触っているかと思うと……」
「……、」
「あんな、何人も女性を傷つけた奴が」
思わず、肩が、跳ね上がる。彼の指が、私の髪にさらりと触れたからだ。
ドクドク、胸の奥から聞こえてきた、苦しげな音の理由。それが、今勝沼君に髪を触られていることだけじゃないのも、気づいていた。
髪を絡ませ、弄ぶ指。彼は自分の指先をじっと見つめている。その柔らかな瞳を見たら、何故だか泣きたくなった。
「……結局、自分が一番大事なんすよ、あの人は」
指を離し、私を囲んでいた腕も壁から離すと、勝沼君は私を真っ直ぐ見据えた。
「俺なら、誰よりも大事にしますよ」
「好きなんすよ、彗さんのことが」