恋色カフェ
──どれくらい、こうしていたんだろう。
水が、飲みたいかも。
そんな人間の生理的欲求が心にぽつんと落ちてきた時、自分があれからずっと玄関に座りこんでいたんだと気づいた。
『……じゃ、また明日』
勝沼君は、何の返答も求めることなく、あの後すぐにここを出て行った。
何か答えてあげれば良かったんだろうか。
ううん、多分違う。欲しくなかったから、彼は求めなかったんだ。
──わかりきった答えを訊くこと程、野暮なことはない。
あの時の──前にアンバーを辞めた日の、私ときっと同じ。
壁に掴まりながら何とか立ち上がると、さっきほどのふらつきもなくなっていた。