恋色カフェ
大口を開けて、さっき買ったチキンベーグルにかじりつこうとした────その時。
「……高宮……さん?」
真横から聞き覚えのある声がして、私はその方向に首を回した。
「やっぱり! 高宮 彗(たかみや すい)さんだよね……?」
息を呑んだまま、固まる。声が、出ない。
「久しぶりだなぁ! 元気だったか?」
「……森谷、店長……」
────3年ぶり、だ。
そうすぐに計算できるぐらいには、頭にあったんだ、と心の中で苦笑いする。
『私、店長の考え方にはついて行けません』
『あ、そう。じゃ、高宮さんの好きなようにすれば』
3年前の21歳の時、私は雑貨も扱っているカフェ『アンバー』で正社員として勤めていた。
社会経験も浅い私は、ただ真っ直ぐで、正義感が強くて……いや、強すぎて、いい加減に見えていた森谷店長のやり方に日頃から不満が募り、ある時思いきりぶつかってしまった。