恋色カフェ
その前の、流された言葉を手繰り寄せようとして店長を見るが、もう扉の前に立っていて、表情は見えない。
店長はそのままカードをスキャンさせると、一瞬振り返って私にカードを投げた。
「俺は、先に出る。
……落ち着いてからでいいから」
さっきまでと違い、ボソリとそう言うと、彼は事務所へと続く扉を開けて外へ出ていった。
「……何なの……」
まだ、熱を帯びている唇を、指で辿る。
指の感触に負けず、残っている唇のそれにまた心臓が煩い。
へたり込んだまま右側を見ると、確かにそこには小さな窪みがあった。
「こんなの、わかる訳ないじゃない……」
誰に言うでもなく呟いて、私は瞳に溜まった液体を拭った。