恋色カフェ
冷蔵庫から水を取り出し、喉に運ぶ。ゴクリと体の中に流れると、胸の中でもやりとしていたものまで流されていった気がした。
店長は……もう家に着いているのかな。
「は……」
吐き出された、乾いた息。笑ったつもりはなかったけど、でも、きっとそれに近い。
こんな時まで、店長のことを考えるなんて。
リビングのソファーに腰を下ろし、そのまま倒れるように横になる。
────あの日。
確かに彼は、ここに座っていた。
もうある筈のない店長の温もりにさえ、愛しさが込み上げてくる。
『……結局、自分が一番大事なんすよ、あの人は』
勝沼君によって打ち付けられた言葉は、私の心に何かしらの影響をもたらしてるとは思う。
それでもやっぱり。
私は森谷煕の温もりを、こうして追いかけてしまうんだ。