恋色カフェ
(そろそろみんな出勤してきたのかな)
恐る恐る、事務所へ繋がる扉を開けると、少しだけ驚いた顔がこちらを向いた。
「お……はようございます」
咥えている煙草の煙は、ゆるりとした風に流れている。
──ゆうべ、この人は誰かを送っていったんだろうか。
「……おはよう」
紫煙を吐き出し、窓の外へと顔を向けながら店長は気怠そうな声で挨拶を返した。
いつもとは明らかに違う様子に、不安が募る。
ゆうべ、何の連絡もしなかったことを怒っているのだろうか。だとしたら、店長だって同じ、なのに。
そもそも、どんなことを連絡すればよかったのか、それ以前に連絡する必要があったのかすら、私にはわからない。