恋色カフェ
「──彗さん」
2階の流し場で雑巾片手にぼんやりしていると、真横から声が掛かった。
「あ……勝沼君」
「掃除?」
私の手元にチラリと視線を振った勝沼君は、少しだけ不思議そうな顔で尋ねる。
「……ううん。ちょっと、サボり」
「彗さんにしては珍しく、馬鹿正直っすね」
そう言って笑った勝沼君につられるようにして、私も笑う。
「じゃ、俺もサボろうかな」
「それは駄目だよ」
「え、自分はいいのに?」
「だって、私は一人で仕事してるから大丈夫だけど、勝沼君は他のスタッフに迷惑が掛かっちゃうでしょ」