恋色カフェ
──油断した。
仕事の話かと、思ったから。
間が悪い、というのか。丁度、事務所が静かになったタイミングで、勝沼君の声はごまかしようもなくはっきりと室内に響いた。
「え……っ」
「何なら今日でも俺はいいっすよ」
「あの、今仕事中……」
「じゃ、仕事終わったら返事下さい」
そう言って立ち上がり、勝沼君は、失礼しました、と涼しい顔で事務所を出て行ってしまった。
──ああもう。残される方の身にもなってほしい。
ちらりとパソコン越しに店長を窺うと、カタログに視線を落としたままで、こちらを気にする様子は無い。
こちらへと視線を向けたのは、店長の向かいにいた彼女の方。