恋色カフェ
「リックも随分とオープンになったわね」
そう言いながら、万由さんはクスクスと小さく笑いを零す。
「せっかくだから行ってくれば?」
「、……え」
「彼は良い“物件”だと思うよ」
それが意図的なのは、考えるまでもなく明白。私がこれにどう返すか。見物だと面白がっているんだろう。
わかっていながらも冷静にはなれず、勢いにまかせて口を開きかけると、
「さてと」
と言って、店長がソファーから立ち上がった。
「もう出かける時間だから、あとは他のフロアスタッフと話しといて。また帰ってきたら続きを話そう」
「わかりました」
優美な笑みを店長に向けると、万由さんも立ち上がった。