恋色カフェ



「ここって一見、インスタントのコーヒーを出しそうなお店に見えるんすけど、エスプレッソマシンはラ·マルゾッコのストラーダ使ってるし」

「ス、トラーダ……?」

「アンバーでも使ってるっすよ。最近主流の全自動マシンと違って、手動な分手間はかかるっすけど、味は淹れる人が素晴らしいと極上のものが抽出出来るんすよ」

「そうなんだ。キッチンってほとんど入ったことないから、実はよく知らなくて……」

「店長の淹れたカプチーノとか、飲んだことないっすか?」

「……そう言えば、無いかも」


勝沼君は、はぁとため息を吐いてから、


「悔しいけど、そういう腕だけは凄いんすよね、あの人」



話しながら目を輝かせている彼を見ていると、まるでここにいない誰かを見ているような気分にさせられる。


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